インダクタのDCR測定方法詳細解説

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2026-09-14

高性能DC-DCコンバータやAI電源モジュールにおいて、DCRへの要求はますます厳しくなり、ミリオームレベル、さらにはマイクロオームレベルまで低下しています。そのため、インダクタのDCR測定は部品選定エンジニアから大きな注目を集めています。

 

多くのエンジニアは、DCR測定は非常に簡単であり、マルチメータやLCRメータのプローブをインダクタの端子に当てるだけで測定できると考えています。しかし、実際の生産現場では以下のような問題が頻繁に発生します。

 

同じインダクタを測定しても複数の測定器で読み取り値が一致しない、プローブの接触圧力によって測定データが変動する、小型・低インダクタンス部品では測定値が大幅に大きくなるなどの問題があります。


インダクタのDCR測定方法詳細解説 

本稿では、これらの原因を詳しく分析し、適切なDCR測定方法について解説します。

 

01 インダクタDCRの本質と測定の難しさを理解する

インダクタの直流抵抗(DCR:Direct Current Resistance)とは、インダクタ巻線に直流電流を印加した際に発生する純粋な抵抗成分を指します。その主な発生源は、インダクタの巻線に使用される銅線自身の抵抗です。

 

このパラメータは、電源変換効率、発熱特性、および電源システムの長期的な信頼性に直接に大きく影響を及ぼします。正確なDCR測定における最大の技術的課題は、一般的なインダクタのDCRが通常数mΩから数百mΩの範囲にあることです。

 

測定対象となる抵抗値がmΩレベルまで低下すると、従来の2線式測定では、測定リード線自身の抵抗(一般的に0.1Ω~0.5Ω)やプローブ接触抵抗(数mΩ~数十mΩ)が無視できなくなります。

 

これらの抵抗成分は被測定抵抗と同程度のオーダーになるため、測定値は実際の抵抗値から大きくずれ、正確なDCR値を取得することが困難になります。

 

02 ケルビン4線式法:リード線誤差を排除する根本的な解決策

低抵抗測定における標準的な解決方法は、ケルビン4線接続(Kelvin Four-Wire Connection)です。この技術は、ウィリアム・トムソン(ケルビン卿)によって1861年に発明され、現在でも高精度な低抵抗測定の基準方式として広く使用されています。

 

1. 2線式測定が適用できない理由

 一般的な2線式測定では、電流印加回路と電圧検出回路が同一の2本の導線を共有しています。そのため、測定器が取得する抵抗値は以下の式で表されます。

R_measured = R_DUT + 2 × (R_lead + R_contact)

ここで、R_leadは1本の測定リード線の抵抗(通常はmΩレベルから数百mΩ)、R_contactはプローブと被測定ポイント間の接触抵抗(mΩレベル)を示します。

 

R_DUTがわずか数mΩの場合、リード線抵抗および接触抵抗による測定誤差は、実際の抵抗値の数十倍に達する可能性があります。

 

2. ケルビン4線式法の基本原理

 ケルビン4線式法は、電流経路と電圧検出経路を物理的に分離することで、この問題を解決します。4本の導線は2つのグループに分けられ、それぞれ異なる役割を担います。

 

Force線(電流印加線、2本):被測定インダクタに既知の一定直流電流を印加します。この電流経路には電圧降下が発生しますが、リード線抵抗や接触抵抗は測定結果の精度に影響を与えません。

 

Sense線(電圧検出線、2本):テスト治具側の端子電圧ではなく、インダクタ両端の実際の電圧降下を独立して測定します。

 

電圧検出回路の入力インピーダンスは非常に高く(最新の測定器では通常 > 1GΩ)、Sense線に流れる電流はほぼゼロとなります。そのため、リード線抵抗や接触抵抗による電圧降下は、検出結果にほとんど影響を与えません。

 

オームの法則に基づき、インダクタのDCRは以下の式で算出できます。

DCR = V_Sense / I_Force

ここで、V_SenseはSense線によって直接測定されたインダクタ両端の電圧であり、リード線による電圧降下を含みません。I_Forceは既知の定電流値です。

 

そのため、両者を除算することで、外部回路に存在するすべての接触抵抗やリード線抵抗の影響を受けることなく、真の直流抵抗値を取得できます。

 

3. 4線式測定時の注意事項

(1)独立接触:4本の測定線は、それぞれインダクタの2つの電極上にある4つの測定ポイントへ独立して接触させる必要があります。

実際の測定治具では、各電極に2本のプローブ(Force + Sense)が同時に配置されますが、治具内部では両者は接続されておらず、接触パッド部分でのみ合流します。

(2)プローブの清掃:電極パッドの酸化やフラックス残留物は、不安定な接触抵抗を発生させます。これはSense線の測定には影響しませんが、電流経路の不安定化や定電流源の飽和を引き起こす可能性があります。

測定前には、無水エタノールによる清掃、または消しゴムなどで電極パッドを軽く清掃することを推奨します。

 

03 測定データの比較検証

Codacaホームページに掲載されているAI向け一体成型インダクタを例として、CSHN100760-56NN型番を選定し、市場で一般的に使用されている以下3種類の測定器を用いて比較測定を実施しました。


インダクタのDCR測定方法詳細解説

 Figure1:CODACA CSHN100760-56NN

 インダクタのDCR測定方法詳細解説

Figure2:直流抵抗測定器

Figure3:マルチメータ

Figure4:LCRメータ

 

図1に示すように、CSHN100760-56NNの仕様書ではDCRを0.22mΩ Max.と定義しています。直流抵抗測定器(ケルビン4線式法)による測定結果は0.196mΩとなり、承認仕様書の要求値を満足しました。実測結果を図2に示します。

 

一般的なマルチメータ(二線式法)を使用し、抵抗測定レンジを基本レンジの200Ωに設定した場合、このレンジでは0.1Ωの分解能しか得られません。測定結果は600mΩとなり、承認仕様書の要求値を満たさず、不適合となりました。実測結果を図3に示します。

 

LCRメータ(治具測定)を使用し、DCR測定モードに設定した後、ゼロ補正を実施して測定した結果は2.78mΩとなりました。

マルチメータと比較すると誤差は大幅に小さいものの、承認仕様書の要求値とは依然として差があり、承認仕様書の検査基準を満たす結果ではありませんでした。

 

以上の結果から、測定結果の精度を確保するため、インダクタなどの磁性部品のDCR測定を行う際には、専用の直流抵抗測定器(ケルビン4線式法)を優先的に使用することが推奨されます。